なみのおと音楽教室では、ピアノ室の防音工事を約60万円で完了しています(壁紙をのぞきます)。
その理由は、ピアノ防音に経験のある大工さんから「窓を中心とした対策」を提案され、効果的な防音対策を打てたことにあります。
総務省や国土交通省、各都道府県も、一戸建て住宅の防音対策は「音響的に弱い部分である、窓から行うのが効果的」と説明するように、窓の防音対策には大きな効果がありました。
この記事ではまず、なみのおと楽教室で実際に施工した工事の内容をご紹介します。
その上で、窓に対する防音対策を行うことで、格安に効果的なピアノ防音ができる理由をみていきます。
個別具体的な住宅の状況や建物を取り巻く環境により、防音に必要な工事の内容は変わってきます。また、音に対する感じ方は人によって異なり、データだけでは判断できない場合もあります。
なみのおと音楽教室の防音が60万円でできた理由は「窓」
一般に防音工事専門の会社に防音リフォームを頼むと、「6畳のピアノ練習室で290万円から」といった相場感になります。
しかし、ある程度敷地に余裕のある一戸建て住宅で「ピアノを気兼ねなく弾ければいい」といったケースでは、そこまでの防音工事費が必要でない場合もあります。
また、当教室の経験上、防音工事は一括で施工するのではなく、例えば窓やドアのような、音響的に弱い部分から施工していき、十分な効果が得られたところで完了とするという方法も考えられます。
当教室が施工した工事内容は、以下の通りです。
- 既存の窓に二重ガラスの内窓を設置
- 壁に遮音材を設置し、断熱材を二重貼りに
簡易的な防音工事ですが、この環境でピアノを演奏しても、隣家からクレームが来ることはありません。
工事施工後、ピアノを演奏した場合の最大音量は、以下の通りです。
- 95dB
- 65dB
- 47.5dB
また、敷地外(前面道路)での騒音レベルは40dBを下回っています。
以下の記事で詳細な工事内容を説明していますが、費用は床の補強を含めて約60万円でした。
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上記の記事では具体的な工事費用や内訳を公開し、騒音計で測定した数値も掲載しています。
専門家も一戸建ての防音は「窓」がキーワードと説明
当教室の防音工事は、古くからの知り合いであり、ピアノ防音の経験もある大工さんに相談しました。
その際「防音は窓から対策するのがいい」とアドバイスをもらいましたが、多くの行政機関や防音の専門会社も同じ説明をしています。
たとえば、総務省公害等調整委員会事務局の「騒音に関わる苦情とその解決方法」という資料には、以下のように書かれています。
多少の費用がかかってもよい場合は、窓などの音響的に弱い部位の改修や厚手のカーテンの設置などが提案できます。窓サッシを一重から二重に変更することで、音のエネルギーは概ね 1/10 に減ります。自動車を例にとれば、走行する車の数が 10 台から 1 台に減ったことに相当します。
「騒音に関わる苦情とその解決方法」総務省公害等調整委員会事務局
これはピアノのように出ていく音ではなく、入ってくる音についてですが、窓を複層ガラスに交換するだけでも、かなりの効果があると確認できます。
しかも、窓への対策はコストパフォーマンスが高く、手頃な費用で効果を体感することができます。
内窓の設置なら窓1つあたりの費用は10万円前後~
ピアノ防音を行う場合、既存の窓を複層ガラスの樹脂窓等に置き換える方法も考えられますが、内窓を設置する方が簡単に施工できます。
価格に関しては、YKK APの公式ウェブサイトで、今すぐ概要を確認することができます。
YKK AP(WEBかんたん診断) |公式サイト
上記のウェブサイトにアクセスしたら、「チャットで相談・質問」から、「まずは1分 かんたん診断!」を試してみてください。
ポイントは「Q5. 住まいのお悩みは? (複数回答可)」で「【騒音】外の音がうるさい」をチェックしておくこと。
実際には1分もかからずに「窓のリフォーム参考価格」とおすすめ商品を見ることができます。
たとえば、なみのおと音楽教室のピアノ室を再度工事するとしたら、窓に関しては上記のような予算感を提示してもらえます。
概要を知りたいだけならこれでOKですし、このページから自宅近くのMADOショップに相談したり、オンラインや電話・メールで問い合わせができます。
内窓(二層窓)によるピアノ防音の効果
では、内窓を設置することで、遮音性能にどれくらいの違いが生まれるのでしょうか? データから考えてみましょう。
上の図でわかるとおり、昼間の住宅街の騒音レベルはおよそ40~50dB。つまり、敷地の外に出て行く音を40~50dBに抑える必要があります。
それに対して、ピアノの音は通常およそ90dB程度です。
では、住宅の外に漏れるピアノの音はどれくらいになるでしょうか?
一般的な木造住宅の遮音性能について、日本音響エンジニアリング株式会社のサイトには、以下のように書かれています。
マンションに比べて10~15dB低い
外壁の遮音性能は一般的にD-35~40程度です。最近の高気密型マンションの場合、窓サッシの部分を除くコンクリート壁部分ではD-50以上あることと比べますと木造の外壁の遮音性能は少し不安が残ります。
木造住宅の遮音設計 : 外部編|日本音響エンジニアリング株式会社
内窓を設置することで-15dBの効果が期待できる
では、既存の窓に加えて内窓を設置することで、ピアノの音をどれくらい低減できるのでしょうか? 大手メーカーYKK APのウェブサイトには、以下のように書かれています。
外窓と内窓の間に空気層ができることと、窓自体の密性がUPすることで外からの音を15dB低減します。
内窓をつける|YKK AP
また「人間の耳は、10dB下がれば、音が約半分に減ったように感じると言われています。」とも書かれており、内窓の設置による効果が大きいことがわかります。
D-35などの数値はD値(またはDr値)といい、壁や建物の遮音性能を示す遮音等級のことです。これとは別に、T値とよばれる指標もあります。
なみのおと音楽教室の実例でも内窓で約15dBダウン
実はこの数値は、なみのおと音楽教室の事例とも一致しています。上の写真でわかるように、内窓を開けた状態と、閉めた状態では約15dBの差が確認できます。
そこで、一般的な遮音性能の木造一戸建て住宅であっても、内窓を設置することで、以下のような遮音効果が期待できるといえます。
一般的な木造住宅で外に漏れるピアノの音 | 最大でおよそ66dB |
内窓(-15dB)を設置した場合のピアノの音 | 最大でおよそ52dB |
日中のピアノ防音としては、かなり大きな一歩となるはずです。
都市部で建物が近接している場合は別として、郊外で敷地に余裕があるケースでは、日中気兼ねなくピアノを弾ける可能性も十分あります。
まずは窓対策をしてみて、「あとどれくらい落とせばいいのか」と考えてみるのも、合理的なピアノ防音対策といえるでしょう。
樹脂窓でシェア7割。YKK APの製品を見学
この業界において、日本における三大メーカーはYKK AP、LIXIL、三協アルミです。なかでもYKK APは、樹脂窓に関して7割の国内シェアをもっています。
そこで今回、最新の製品情報をキャッチアップするために、梅田にあるYKK APショールーム大阪を見学してきました。
ショールーム内の防音体感コーナーでは、窓を開け閉めして効果を確かめる事ができます。ここでは異厚複層ガラスの内窓を体感できますが、高い遮音効果が感じられました。
異厚複層ガラスというのは、厚みが異なるガラスを組み合わせた製品です。
同じ厚みのガラスであれば、同じ周波数の音を通しやすいという問題があります。そこで、異なった厚みのガラスを組み合わせることで、より遮音効果を上げようという仕組みです。
ショールームでは、そのほかにも同社製品の展示が行われており、ていねいに解説してもらうことができました。
最も多くの一級建築士が「採用したい」と答えたYKK AP製品
YKK APについて調べてみると、同社が業界でもトップクラスのシェアを誇るだけでなく、保有する特許の質や量でもトップクラスであることがわかりました。
たとえば株式会社パテント・リザルトのサイトでは、Biz Cruncherというツールによる分析結果として、業界内の特許総合力ランキングを「1位 YKK AP、2位 LIXIL、3位 三協立山」と判定しています。
【サッシ】特許総合力トップ3はYKK AP、LIXIL、三協立山|パテント・リザルト
日経XTECH(クロステック)による記事では、一級建築士が「採用したい」と答えた建材のうち、戸建て住宅用サッシ部門でYKK APが1位という結果でした。
一級建築士の77%が「採用したい」「今後も採用したい」と答えています。
参考:「戸建て住宅用サッシ」は1位がYKK AP、機能性とデザインを評価|日経XTECH
YKK APではモノづくりのすべての工程を自社の国内外の製造拠点で一貫して行うため、安心して採用することができます。
まとめ「一戸建てのピアノ防音は『窓』から対策」
この記事では、一戸建て住宅で気兼ねなくピアノを弾ける防音対策を、なるべく格安で施工する方法として「内窓」をとりあげました。
もし仮に、外部に面した窓が1つだけの部屋であれば、10~20万円もあれば施工できるかもしれません。
まず窓対策をしてみる理由
- 子どもたちがいつまでピアノを続けてくれるかわからない
- できるだけお金をかけず、ある程度ピアノの防音対策をしたい
- 電子ピアノからアップライトやグランドピアノに置き換えたい
- 思いついたらすぐピアノを弾ける環境を整えたい
そういった場合、「住宅の中で、最も遮音性が低い『窓』から対策する」という方法が合理的です。
また、この記事で紹介してきた遮音効果のある内窓を設置する事には、以下のようなメリットがあります。
内窓のメリット
- およそ-15dBの遮音効果がある
- 工期が短く、窓1つあたり60分で完了する場合も
- 今ある窓のタイプに合わせて、バリエーションが豊富
- カラーバリエーションが豊富でインテリアになじむ
- 暑い時は涼しく、寒い時は暖かく過ごせる
- 窓が冷えにくく、結露しにくい
ただし、内窓にはひとつ、デメリットがあります。
窓のロックが2つに増えるため、開け閉めの手間が増えてしまうのです。メリットの方が大きいですが、毎日のことなので「めんどうだ」と感じてしまうこともあります。
どうしても開け閉めの手間が気になる場合、既存の窓を複層ガラスの樹脂窓に置き換えるという手もあります。そういった点を含めて、具体的なおすすめ製品や概算の費用は、以下の公式ウェブサイトで確認・相談してみてください。
YKK AP(WEBかんたん診断) |公式サイト
また、内窓の設置には補助金も用意されています。
内窓1つにつき17,000~34,000円の補助金が出る可能性があるので、その点も上記の公式サイトで相談してみてください。