ピアノ防音

組み立て式防音室のおすすめ機種を取材!マンションでピアノが演奏できます

ピアノの音は約100dB(デシベル)。

マンションの隣室に音漏れしないようにするには、Dr-30から45くらいの性能が必要になります(注)。

値段でいえばおよそ80万円から200万円程度。200万円を越える製品を検討する場合、部屋の防音リフォームと競合する価格帯になってきます。

防音リフォームと比較する場合は、以下の記事を参照してください。

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ここからは、ピアノやギターなどの楽器防音と、ナレーション録りに使えるお手軽な防音ルームを紹介していきます。

……Dr値(D値)とは、日本建築学会が定める遮音性能の目安。隣り合う2つの部屋で、どれくらい音を小さくできるかを表す数値(単位:dB)です。

やりたいこと別「防音に必要な数値・単位」

組み立て式防音室イメージ
カワイの防音室「ナサール」

この記事を作成するために楽器の防音に必要なデータを調査し、また市販の組み立て式防音室が、楽器防音に必要な基準を満たしているのかを確認してきました。

まず、ピアノや管楽器ドラムギターなどの各楽器の音の大きさを確認しておきましょう。

楽器の騒音レベル

この表でわかるようにピアノの音は少なくとも100dB程度、場合によっては110dBを超える音量となります。

当教室で測定してみると、やはり100dB前後の音量がありました。

ドラムやトランペットなどの管楽器は、ピアノよりも大きな音が出る場合があります。比較的控えめな音量のギターやウクレレであっても、90dB程度は出てしまいます。

迷惑にならない音量はどれくらい?

上の図は大阪府がホームページで紹介している一般的な騒音の目安です。

ギターの90dBという音量は、パチンコ店の店内に匹敵するうるささということになります。

表にはありませんが、ピアノの100dBは、地下鉄内の騒音と同じくらいの大音量です。

楽器の音をどれくらい小さくすればいいの?

東京都の規制値(戸建ての場合)
東京都の規制値(戸建ての場合)

では、そんなに大きな楽器の音を、どれくらい小さくすればいいのでしょうか?

東京都が公表する「日常生活の騒音・振動の規制」によると、もっとも厳しい「第一種地域」の場合、下の表のような規制基準が設けられています。

音源の存する敷地と隣地との境界線における音量

6~8時 8~19時 19~23時 23~6時
40dB 45dB 40dB 40dB

日中は45dBですが、夜間や早朝は40dB。これは、図書館の館内に匹敵する静けさです。

楽器の音を昼間の戸建て住宅地(東京都の規制値)レベルに引き下げるとしたら、以下のような対策が必要になります。

戸建て住宅街での防音目標数値

ドラムの音 -70dB
ピアノの音 -60dB
ギターの音 -50dB

楽器によりますが、近隣の住宅に届く音を少なくとも50~70dB小さくしないと、楽器演奏の音が、騒音基準を上回ってしまうことになります。

とはいえ、敷地に余裕がある一戸建て住宅なら、防音リフォームは比較的低予算で実現できる可能性があります。

なみのおと音楽教室では予算約60万円でピアノ室の防音を完了させましたが、その内容を以下の記事にまとめています。

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防音リフォームの見積り

戸建て住宅で防音リフォームの見積もりを取る場合は、タウンライフリフォームがおすすめです。

当社でタウンライフさんに取材したところ、防音工事の項目を設けていないものの、見積り依頼はよくあるそうです。

コツは、見積り依頼時に「内装工事」を指定して、「リフォームしたい内容」を書く欄に具体的な防音リフォームの内容を記述することです。

防音工事に強い業者は「内装工事」で登録しているため、外装ではなく、内装工事を選択して見積りを依頼してください。

詳しくは以下の記事で解説しています。

参考リンク「日常生活等に適用する騒音の規制基準」(東京都)

マンションなど集合住宅の場合はより厳密な防音対策が必要

国土交通省が定めるマンション界壁の性能
国土交通省が定めるマンション界壁の性能

マンションやアパートなどの集合住宅では、楽器演奏の音が界壁を隔てた隣室に届いてしまいます。

自宅と隣の家の間にある外壁の性能は国土交通省の定めにより少なくとも40dB以上の防音ができる仕様となっています(実際には50dB以上の場合が多い)。

そこから、100dBで演奏したピアノの音が60dB程度の音量になって隣戸に到達している、ということになります。

この60dBの音を、20~30dB以下に低減することが必要になります。

ただしこれは500MHz付近の音に対する対策で、低音はより対策が難しく、場合によっては別途対策が必要になることもあります。

防音性能を表すDr値(D値)

音圧レベル差等級Drの基準曲線
音圧レベル差等級Drの基準曲線

どれぐらい音を小さくできるかという性能はD値またはDr値という単位で表します。

これは日本建築学会が定める遮音等級という数値で、500MHzの音をどれくらい低減できるかという性能を示しています。

一般に高音は防音対策がしやすく、低音になるほど難しいという傾向があります。500MHz時の性能を表すDr値は、ひとつの参考と考えた方がいいでしょう。

また、サッシなどの性能を表すT値や、床の遮音性能を表すL値という指標もよく使われます。

この記事ではあまり触れていませんが、マンションの防音では床から伝わる固体音についても対策する必要があり、その場合にL値が問題になってきます。

ピアノやドラム・管楽器演奏にはDr-30以上

組み立て式の防音室で30dB以上音を小さくできる性能を求めると、カワイやヤマハといった楽器メーカーが販売している本格的な防音ルームに絞られるでしょう。

カワイが販売しているナサールなどの防音ルームはDr値30以上。ヤマハが販売しているセフィーネNSなどの防音ルームはDr-35以上のラインナップとなっています。

それだけの性能があれば、マンションでピアノ演奏が可能になるはずです。

そこで、実際に数値通りの性能が出ているのかを調べてきました。

それが上の動画です。

楽器店頭に置いてあったDr-40のカワイ製の防音ルームの室内でスネアドラムを叩くと105dB程度の数値となりました。

一方、防音ルームの外に出て窓を閉めると65dB程度に低減できました。

公称値であるDr-40程度の性能は出ていると考えられます。

そこから、マンションでピアノなどの楽器を弾く場合、こういった組み立て式防音ルームで対策できると考えてよさそうです。

実際には床を伝わる固体音が隣室に影響する可能性もあり、その場合は追加の対策が必要になるかもしれません。一般にはピアノの下に防振クッション、防振マットなどを敷くことで対策できます。

ギター・ウクレレなどの楽器にはDr-20前後必要

ギターやウクレレの音はピアノより小さく、ギターでおよそ90dB、ウクレレで80dB強です。

ギターの90dBを基準に、マンションで演奏するための防音を考えてみましょう。

界壁の防音性能がDr-40とすると、Dr-20程度の防音室を設置する必要がありそうです。この点、低価格の簡易防音ルームの中にもDr-20を実現できるものがあります。

防音専門店のピアリビングが販売するおてがるーむなら、ヤマハやカワイの製品より格安の約20万円で、図のように20dB以上低減することができます(500MHz)。

ごく一般的なマンションであれば、実際には界壁の性能がDr-50以上はあるため、この製品で十分に対策できるはずです。

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ウクレレの場合は、より低価格な簡易防音ルームでも対策できる可能性があります。

試しにOTODASU(約10万円~)の現物を確認してみると、10dB以上の性能が確認できました。

ギターやウクレレで「あと一歩」の防音対策が必要な場合、10万円で買える簡易防音ルームで対応できる可能性があります。詳しくは以下の記事で解説しています。

YouTubeのナレーションなどはDr-10以上が目安

ここまで解説してきた内容を踏まえてYouTube動画などのナレーション撮りに最低限必要な防音環境も考えてみました。

もう一度一般的な住宅の騒音レベルをおさらいしておきましょう。

図のように住宅街の騒音レベルは日中でおよそ40dB夜間は30dB強と考えられます。

ここまでは楽器の音を外に漏らさない対策を考えましたが、ナレーション録りの場合は環境音がマイクに入らないような対策が必要になります。

アップライト合同会社は住宅街の中にあり通常の環境音は40dB前後です。

宅配便の配達トラックなどが通ると室内での騒音レベルは43~47dbに上がります。郵便バイクの場合は42~43dbぐらいになります。

こういった雑音を低減し、ナレーション録りができる環境を作るなら、格安の防音室でも対応可能でしょう。

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設置のしやすさと性能のバランスを考えると、infistDesignのライトルームがおすすめです。

10万円前後から買えますが、-15dB程度音を小さくすることができます。

対策レベル別!おすすめの組み立て式防音室&グッズ

ここからは、目的別(対策レベル別)に、おすすめの防音室をリストアップしていきます。

しっかりした防音室はそれなりの価格になってしまいますが、それでもリフォーム工事による防音対策より格安となるケースが多いでしょう。

子ども部屋(6畳)を防音リフォーム 260万円(税別)~
カワイ「ナサール」Dr-40/2畳タイプ 132万円(税別)

簡易的にアップライトピアノの防音をするとしたら、本格的リフォームの半額ですむ計算になります。

しかし、本格的な防音を求めると、結局は防音リフォーム工事をする場合と同じくらいの費用がかかります。「どこまで対策するか」によって、防音室を買うか、防音リフォーム工事を施工するかを選ぶのがいいでしょう。

防音工事の費用目安は島村楽器のパンフレットによります。マンション・RC住宅で6畳の部屋をリフォームすることを想定しており、遮音性能は-60dB。解体費用や廃棄物・残材処理費は含まれていません。

ドラムや大音量のピアノも安心な大手メーカー製防音室

ヤマハはセフィーネNS(アビテックス・セフィーネNS)、カワイはナサールという組み立て式の防音室を販売しています。

メーカー ヤマハ カワイ
遮音性能 Dr-35~40 Dr-30~40
サイズ 0.8畳~4.3畳 0.8畳~4.9畳
価格770,000円~
2,959,000円
450,000円~
2,270,000円
※カスタムタイプなどは含みません。

ピアノが設置可能なモデルは、カワイでは1.7畳タイプ、ヤマハでは2.0畳タイプ以上です。このサイズ以上であれば、アップライトピアノが設置できます。

アップライトピアノ対応製品

カワイでは1.7畳タイプ以上のサイズならアップライトピアノが設置できるとしています。しかし、専門店を取材すると「1.7畳では、置けるけど本当にぎりぎり」との説明がありました。

カワイもヤマハも、2.0畳タイプ以上が望ましいようです。

カワイ「ナサール」 2.0畳 780,000円~Dr-30~
ヤマハ「セフィーネ」 2.0畳 1,276,000円~ Dr-35~

上記価格は税別・送料組立費別ですが、カワイのほうがお得感があります。両社の製品を確認し、実際に楽器を演奏してみたのですが、いずれも数値通りの防音性能を備えていると確認できました。

グランドピアノ(C3クラス)であれば3.0畳以上の製品が必要です。

グランドピアノ対応製品

カワイ「ナサール」 3.0畳 950,000円~ Dr-30~
ヤマハ「セフィーネ」 3.0畳 1,617,000円~ Dr-35~

こちらもカワイのほうが格安です。ただし、カワイのナサールはヤマハに比べて、全般的に内寸が数センチ小さい点が気になります。

購入に当たっては、現物のサイズをしっかり測っておくほうが安心でしょう。

また、ヤマハのセフィーネは、部屋の防音リフォームに近い予算感になってしまいます。低金利なリフォームローンの魅力を考え合わせると、「防音室を置くかリフォームするか」を検討してみてもよさそうです。

防音リフォームについては、以下の記事をご参照ください。

ギター・ウクレレに適した簡易防音室

ギターやウクレレをしっかり練習するなら、簡易防音室の中でもしっかり目の「おてがるーむ」をおすすめします。

防音専門店のピアリビングが作っているので、しっかりした防音材+遮音材という本格的な構成で、室内の音を20~25dB低減してくれます。

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Dr-10程度の簡易防音室が多い中、ギターやフルートなどの楽器練習であれば、最低限このレベルの製品が望ましいといえるでしょう。

10万円代の防音室でもナレーション録りなら可能?

条件次第ではありますが、YouTubeなどのナレーション録りなら、10万円前後から購入できる格安防音ルームでも対応できます。

郊外の住宅地であれば、ある程度快適にナレーションを録音できるでしょう。

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このクラスになるとDr値を公表している製品は少なくなります。infistDesignのライトルームもDr値は書かれていませんが、開発会社の測定で-15dBの性能があります。

また、チャックで簡単に組み立てられ、使用しないときに畳んでおけるのもメリットです。

まとめ:防音ルームの選び方

ここまで見てきたように、やりたいことによって防音に必要な予算が変わってきます。

ピアノ防音 Dr-35以上 70万円~
ギター防音 Dr-10~20 20万円~
ナレーション Dr-10 10万円~

ピアノ防音の場合は空気中を伝わる音だけでなく、床や壁を伝う音も心配なので、できれば防音専門店と相談したほうがいいでしょう。

有名楽器店の中では島村楽器が積極的に取り扱っています。

ただ、グランドピアノを設置する場合や、より完璧な防音を求める場合は、部屋自体を防音工事したほうがいいかもしれません。

防音工事の予算や業者の探し方は、以下の記事で解説しています。

ピアノのほか、ドラムや金管楽器など、音の大きな楽器の演奏の場合はリフォームも検討してみてはどうでしょう?

より音が小さな楽器なら予算10~20万円

ギターやウクレレ、フルートなどの演奏であれば、まず防音室を導入し、万が一音漏れするようなら防音材を貼っていく方法で対策できそうです。

ギターなどにおすすめ

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上記のおてがるーむなら、防音専門店のピアリビングが製造しているので、値段の割に本格的な構造です。

ナレーション録りなら

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YouTubeなどのナレーション録りであれば、infistDesignのライトルームを候補にあげます。500MHzの音を15dBほど低減でき、折りたたみが簡単なのもメリット。使わないときは畳んでおけます。

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