基準となる音(ルート)に3度と5度の音を加えた和音をトライアド(3和音)といいます。ルートの上に3度間隔で音を積み上げたもの、と考えることもできます。

トライアドでは、コードを構成する真ん中の音(3度の音)が調性を決めます。真ん中の音が長3度の場合はメジャーコード、短3度の場合はマイナーコードになります。
また、トライアドには、メジャー・トライアドとマイナー・トライアドのほか、オーギュメント・トライアド、ディミニッシュ・トライアド(m-5)、sus4、sus2があります。
四和音やテンションコードについては別記事で解説しています。
タップできるもくじ
トライアドは和音(コード)の基本形
高さの違う2つ以上の音が同時に響く合成音を、広い意味で和音(コード)といいます。しかし、西洋音楽では「3和音」が和音の基礎であると考えられており、2和音も、3和音の音が1つ省略されたものと考えます。

つまり、トライアドが和音(コード)の基本的な形だと考えることができます。
ロックギターで多用されるパワーコードも、トライアドの真ん中の音を省略したものと考えられます。たとえばパワーコードC5は、CまたはCmの3rdを省略したものです。
5種類のトライアドの構成と性質
トライアドは、以下の5種類に分類できます。なかでも、メジャートライアドとマイナートライアドは主要なコードで、この2つだけで多くのコード進行を作ることができます。
オーギュメントトライアド、ディミニッシュトライアド、sus4などは、どちらかというと変化を付けたいときに使うことが多いコードです。
メジャートライアド | 長3和音 |
マイナートライアド | 短3和音 |
オーギュメントトライアド | 増3和音 |
ディミニッシュトライアド | 減3和音 |
sus4・sus2 | 係留和音 |
メジャートライアド
コードを構成する音のうち、3rdの音が調性を決定づけます。
ルートから3rdの間隔が長3度だと明るい響きのメジャーコード(メジャートライアド)となり、短3度だと暗い響きのマイナーコード(マイナートライアド)となります。

メジャートライアドは、上の図のような構成となります。
ルート(根音)+長3度+短3度
マイナートライアド
少し上で述べたとおり、マイナートライアドは暗く寂しい響きが特徴です。

マイナートライアドは上の図のような構成となります。
ルート(根音)+短3度+長3度
オーギュメントトライアド

オーギュメントはメジャーコードの3つめの音(ルートから5thの間隔が完全5度の音)を半音引き上げたコードです。
ルート(根音)+長3度+長3度
各コードが長3度間隔で並んでおり、不協和で緊張感のある響きが特徴です。多くは装飾的に使用されます。また、クリシェなどでもよく使用されます。
このコードだけを鳴らすと少し違和感を感じますが、コード進行の中で経過的に使うと違和感なく聴くことができます。
ディミニッシュトライアド(m-5)

ディミニッシュトライアド(マイナーフラットファイブ)は、図のようにルートの上に短3度間隔で音を積み重ねた構成となります。
ルート(根音)+短3度+短3度
2組のトライトーン(注)をもち、不安定で印象的な響きが特徴です。動画のME(BGM)では、不気味なシーンなどで使用されることが多いコードです。
注……トライトーンとは全音3つ分離れた音程のことで、不安定な響きをもちます。
ディミニッシュもクリシェで使うことが多く、またドミナント7の代理コードとして使うこともよくあります。
ただし、トライアドで使うことは少なく、どちらかというとディミニッシュ7が多く使われます。
ディミニッシュ7
人によっては「ディミニッシュとはディミニッシュ7(dim7)のこと」と考える場合があります。その場合、3和音のディミニッシュをm-5(マイナーフラットファイブ)と表現することもあります。
sus4とsus2(サスペンデッドコード)
トライアドの真ん中の音(3rdの音)を半音ずらすコードを、サスペンデッドコード(係留和音)といいます。
sus4の場合は、下の図のように3度の音を半音上にずらします。

緊張感のある印象的な響きの和音で、ポピュラー音楽のコード進行ではよく使われます。たとえば、以下のようなコード進行で、sus4を通って解決するようなパターンがよく見られます。
|Dm7| G7 |Csus4| C |
短7度音を加えた7thsus4コードもよく使われます。
一方、sus2の場合はトライアドの3度の音を、下の図のように半音下げます。

sus2はsus4に比べると、あまり多用されるコードではありません。
トライアドをスケール上に表示すると/ダイアトニックコード
ダイアトニックスケール上に現れるトライアドをダイアニックトライアド(調性内3和音)といいます。
ダイアトニックコードは楽曲の土台となるようなコードで、コード進行中で多用されます。
以下のように並べてみると、視覚的に把握することができます。

展開形とオンコード(分数コード)の関係
ルート(根音)以外がそのコードの最低音となるように音を積んだコードを転回形といいます。

まず、ルートが最低音となる積み方をしたコードを「基本形」といいます。
最低音を1オクターブ高くして、最高音にする操作(転回)を行うと「第一転回形」になります。
さらに、第一転回形の最低音を1オクターブ高くすると「第二転回形」になります。
トライアドの場合、もう一度転回すると基本形に戻ります。
転回形はオンコードの一種
転回形はオンコードの一種とも考えられますが、すべてのオンコードが転回形というわけではありません。
Am/C | 転回形である |
Am/Bb | 転回形ではない |
コードAmの構成音はA-C-Eですから、Am/Cは第一転回形と考えることができます。
ところが、B♭はAmの構成音ではないので、Am/B♭はトライアドの転回形ではなく、B♭のベース音にAmをのせたものと考えられます。
まとめ

トライアドはコード付けの基本となるもので、これだけでも多くのコード進行を作ることができます。
実際、ダイアトニックコード3~4つだけで書かれた名曲もたくさんあります。
ダイアトニックコードだけで弾ける名曲
曲名 | アーティスト | 使っているコード |
Mr.Tambourine Man | ボブ・ディラン | G、A、D |
Knockin' On Heaven's Door | Guns N' Roses | C、D、G、Am |
フレンズ | レベッカ | Em、C、D、G、B7、A、B |
日曜日よりの使者 | ハイロウズ | C、F、G |
この機会に、こういった曲をもう一度聴いてみてはどうでしょう?
なみのおと音楽教室のウェブサイトや公式ラインでは、このほかにも、アレンジや作曲に役立つ知識をたくさん公開しています。
興味がある方はぜひ公式ラインに登録するか、このサイトをブックマークしてください。

スマホで見ている方は、以下のボタンをタップしてください。
公式LINEまた、ピアノの先生向けのアレンジ講座「自分らしく輝ける実践アレンジ講座」については、以下のページで紹介しています。
参考文献
清水響(2018)『コード理論大全』リットーミュージック
篠田元一(2020)『実践コードワーク 完全版 理論編』リットーミュージック
葛西保郎(1994)『やさしい作曲のABC』kmp
供田武嘉津(1997)『最新 学生の音楽通論』音楽之友社
石田ごうき、大浦雅弘、熊川ヒロタカ(2017)『使える!コード理論』リットーミュージック