ピアノ

講師演奏で「実際に弾かれた100曲」調査|ピアノ発表会

2022年11月7日

発表会の講師演奏、どんな曲にしよう?

レッスンや雑用で忙しく、なかなか考えがまとまらないこともありますよね。そんな時ふと「他の先生方はどうやって選曲しているの」と気になることがあります。

この記事では、現役ピアノ・エレクトーン講師の方々が実際に演奏した100曲を調査してその傾向を見てみました。

その結果、なんと2割近い方がショパンを弾くということがわかりました。また、クラシックの選曲では「人気の作曲家や楽曲に集中する」という傾向があったのに対し、ポピュラーでは「バラバラだけどジャズとロックは避けられる」という傾向がありました。

そもそも講師演奏は必要?何のためにあるもの?

講師演奏の曲決め、迷うこともよくあります。そんな時、講師演奏は何のためにあるのかを考えてみてはどうでしょう。

ピアノ教室がピアノを学ぶ場所である以上、講師演奏は主として「生徒のためにある」ということは間違いないでしょう。しかし、生徒に何を学んでもらいたいかは、教室の運営方針により異なります。

大きく分けると、

  1. 大曲を弾きこなし生徒のモチベーションを上げてもらう
  2. 身近な曲を美しく弾くことで「こう弾けばいいんだ」と気付いてもらう
  3. 演奏を楽しんでいる姿を生徒に見てもらう

この3つが挙げられるのではないでしょうか。

ピアノ発表会で「講師演奏なし」の先生は1~3割!?

ピアノ発表会で講師演奏をするかしないか調査(グラフ)
データ出典:アンサンブルオーブ

ピアノ教室運営サポートを行うアンサンブルオーブさんのアンケート調査で、発表会の度に毎回講師演奏をしている先生は67.7%。いつも講師演奏をしない先生が1割弱ですが、やらない場合もある先生をあわせると32.3%にのぼることがわかりました。

「3割の先生が講師演奏をしない事がある」とすると、どうしても大変な時は「講師演奏をしない」という選択もあり得るのかもしれません。

大曲を弾かなくても生徒に何かを感じてもらえる

しかし「講師演奏をしたくないなぁ」と思う理由が、大曲を弾かないといけないというプレッシャーであれば、発想を転換してみてはどうでしょう。短い曲を美しく弾くことで生徒にお手本(演奏の深め方)を示してあげることも、意味のある講師演奏です。

この記事を書くためにアメブロのピアノ教室ブログを約3年分サーベイしてわかったのですが、自分の能力の限界に挑戦している先生が意外とたくさんいらっしゃいました。

なかには「講師演奏で頭が真っ白になり止まってしまった」経験を持つ先生も複数いらっしゃいました。1人でなく、複数人だったことには驚きました。

先生がそこまで苦しんで弾いている姿が生徒にどう見えるか? それを考えると、ちょっと心配な気もします。むしろ身近な曲を美しく弾くことで「同じ曲でも先生が弾くとこんなに違うんだ」と感じてもらう方が、意味があるかもしれません。

弾きたい曲がない時はアレンジしてしまうのがおすすめ

教室の方針にもよりますが、自分が好きな曲を楽しんで弾くことは大切だと感じます。日頃から生徒さんたちに「音楽の楽しさを伝えよう」と指導されているなら、やはり「好きな曲」が大前提。どうしても見つからない場合は自分でアレンジするのがおすすめです。

自編曲のいいところは、好きな曲を好きなアレンジで弾けるだけでなく、ちょっとくらい間違ってもそれはそれで「正解」といえる点。バタバタと忙しい発表会の中で弾く時に、ミスを気にせずのびのびと演奏することができます。

先生が楽しんで演奏できていると、それは生徒にも伝わり、好循環につながっていきます。

気になる方はぜひアレンジにも挑戦してみてください。アレンジについて学んでみようかなと思ったときの記事も作成中です。

講師演奏は最初?最後?どちらがいい?

講師演奏はプログラムの最初がいいのか、最後がいいのか? 正解はないと思いますが、最後に弾く派の人が多いようです。私も生徒さんや保護者の方から「最後がいい」といわれたことがあります。

ただし、演奏会の進行があわただしい場合や、自分の演奏に集中したい場合は、最初に弾くのも手かもしれません。実際、講師演奏をプログラムの最初にもってくる先生もいました。最初と最後の両方弾くという先生もいらっしゃいました。

講師演奏はクラシック?ポピュラー?

ピアノ発表会の講師演奏で演奏されるジャンル(グラフ)

アメブロの記事をサーベイして、実際に全国のピアノ・エレクトーンの先生方が演奏した100曲を確認すると、結果は64対36でクラシックが多数を占めます。

エレクトーンを除外してピアノだけに絞ると、さらにクラシックの割合が増えるはずです。そこから、全国の先生方は、どちらかというとクラシックをメインに曲目を決めていることがわかります。

おそらく、基本はクラシックで、理由がある場合はポピュラーを選択しているように思えました。

中にはクラシックとポピュラーの2曲を演奏することにしている、という先生もいらっしゃいました。この方は「教室の方針として両方教えているから両方演奏する」という理由があるそうです。

ポピュラー音楽独特の難しさには要注意

ただし、普段あまりポピュラー音楽を演奏しない方が何となく曲を選んでしまうと、ちょっとした壁を感じるかもしれません。

  • リズムの壁
  • 楽譜に書かれていないことの壁

このあたりは注意点だと思います。

リズムについては、特にドラムがどのように叩いているかを理解していないと、うまく表現できない可能性があります。

また、それを前提に、譜面に書かれていないニュアンスを理解した上で弾くことも重要になります。たとえば同じスイングにくくられるリズムでも、曲にあわせて「踊る」ことが前提のスイングジャズと、演奏そのものを追求したビバップではニュアンスが異なります。

その点、演奏しやすいおすすめ曲をあげるとしたら「情熱大陸」「ルパン三世」「リベルタンゴ」など。この3曲は実際に演奏している先生が多いことからも、舞台映えすることがわかります。

ただし「リベルタンゴ」の原曲は持続音のメロディーが印象的。ピアノソロで演奏するよりも、連弾やエレクトーン、バイオリン、チェロとのアンサンブルがおすすめです。

自作曲を演奏される先生も見受けられました

今回は「選曲」というテーマで調査していたので、「自作曲を弾きます」という先生はカウントしませんでした。しかし、自作曲を演奏した先生が何名か見受けられました。

傾向としては、自作曲を演奏する/演奏したという先生は、ポジティブで楽しそうな記事を書かれていたのが印象的でした。「ワクワクが止まらない」と書かれている先生や、「若い頃作った曲が今は弾けない。でも変えてしまうから大丈夫!」という先生が印象に残っています。

教室のカラーによっては自作曲を考えてみてはどうでしょう。

実際に演奏された100曲と講師演奏の楽曲選び

フレデリック・ショパン
フレデリック・ショパン

今回はアメブロ内をサルベージするという方法でリサーチを行いましたが、講師演奏で最も弾かれた作曲家はショパンでした。なんと全体の18%がショパン。ここから、意外と選曲が被っているということがわかります。

記事後半では、実際に演奏された100曲の内容を見ながら、講師演奏の曲目や選曲を考えていきます。

今回の調査は、Googleのサイト内検索機能を使い、アメブロの講師演奏の記述を3年ほどさかのぼってすべて見ていくという方法で行いました。

クラシックでよく演奏された作曲家・楽曲

ピアノ発表会の講師演奏でよく演奏される作曲家ベスト8

実際に演奏された64曲のうち18曲がショパン。クラシックに限っていうと、ショパン人気は圧倒的でした。ショパンのどの曲が弾かれているのかをカウントすると、バラードと幻想即興曲が1位タイ。エチュード、子犬のワルツ、ノクターンが3位タイで続きます。

ショパンに次いでよく演奏されたのは、モーツァルトとラフマニノフ。曲の難易度はさておき、クラシックの場合は特定の作曲家に集中する傾向がありました。

近現代の作曲家を選ぶ人は少数派で、またあまり知られていない曲を選ぶ方も少数派でした。

これには2つの理由があると推測できます。講師演奏曲に求められるものは、

  1. 聴き覚えがあって聴衆が盛り上がる
  2. 制約の多い中で練習して弾きこなせる

こういった条件から、クラシックの場合はどうしても特定の作曲家、特定の楽曲にかたよるのかなと思います。

クラシックでは、誰もが知っている曲でありながら限られた時間で練習できる曲、という制約からかショパンに集中する傾向がありました。

ポピュラーでよく演奏された楽曲

一方、ポピュラーの場合は特定の作曲家や楽曲にかたよりにくく、全体にばらける傾向がありました。葉加瀬太郎の「情熱大陸」は比較的よく演奏されていますが、それ以外はほとんどバラバラです(久石譲は「ジブリ」でくくったため、別枠で検討します)。

「情熱大陸」は比較的演奏しやすい点が支持されたのだと思います。

また、同じく演奏のしやすさと圧倒的な耳馴染みから、ディズニー関連やジブリ関連がよく選ばれる傾向がありました(各6曲)。久石譲の作品は多いのですが、これは作曲家名で選ばれているというよりも、ジブリ関連ということで選ばれている可能性があります。

いずれにせよ、こういった楽曲は演奏しやすく、また聴衆の受けもいいため、講師演奏曲を選ぶ際の参考になりそうです。

ポピュラー音楽が特定の作曲家に集中しにくい理由は、推測ですが、そもそも聴衆が聴き慣れた曲が非常に多いことや、毎年のはやり廃りに影響されることなどが考えられます。

ポピュラーではディズニー関連とジブリ関連が選曲されやすい傾向。また葉加瀬太郎の「情熱大陸」などは人気がありました。

ポピュラー音楽で避けられていたジャンル

実は100曲の中でジャズのスタンダードは1曲だけでした。具体的にはベニーグッドマン楽団の演奏で有名な「Sing Sing Sing」をノリよく演奏されていた先生がいらっしゃったのですが、一般には避けられる傾向がありました。

おそらくその理由は、ピアノ1台でのジャズ演奏が難しい事にありそうです。ドラムスやベースが入れば別ですが、ソロで楽曲の世界に引き込むような演奏は困難でしょう。

また、ロックも避けられる傾向がありました。演奏されたのはクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」1曲のみです。しかも、グラムやメタルからオペラにいたるまで、さまざまなジャンルをミックスしたこの曲は、そもそも純然たるロックナンバーかどうかも不明です。

そこから、ポピュラーではジャズとロックが避けられる傾向にある、ということがいえそうです。

ポピュラーで避けられるジャンルはジャズとロック。リズムやノリ的なものの再現が難しい曲は避けるのが無難かもしれません。

まとめ:「何のために演奏するか」を考えると答が出ます

日々指導や雑務に追われ、練習時間も満足にとれないピアノの先生にとって、講師演奏は悩みのたね。なんとなく、これまでの慣例やまわりの先生を見た感じで「大曲を弾かねば」という思い込みがあるかもしれません。

しかし、何のために講師演奏をするのか考えてみる事がヒントになります。

講師演奏の目的
  1. 大曲を弾きこなし生徒のモチベーションを上げてもらう
  2. 身近な曲を美しく弾くことで「こう弾けばいいんだ」と気付いてもらう
  3. 演奏を楽しんでいる姿を生徒に見てもらう

そう考えると大曲を演奏してもいいですし、身近な曲を美しく弾くのも意義のある講師演奏といえるでしょう。そこから生徒が何かを感じてくれれば成功です。

あるいは自作曲や自編曲を弾くことで、自分も楽しんで演奏し、生徒に新しい音楽の魅力を伝えてあげるのもおすすめです。

付録:実際に演奏された100曲全データ

最後に、実際に演奏された100曲のデータを掲載します。

実際に演奏されたクラシックの曲
作曲者または出典 曲名 演奏回数
ショパン バラード 3
幻想即興曲 3
エチュード 3
小犬のワルツ 2
ノクターン 2
マズルカ 1
舟歌(バルカローレ) 1
前奏曲 1
ピアノ協奏曲第一番 1
革命のエチュード 1
華麗なる円舞曲 1
モーツァルト ピアノ・ソナタ 第13番 2
トルコ行進曲 1
『ああ、お母さん聞いて』による12の変奏曲 1
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 2
前奏曲 嬰ハ短調 1
絵画的練習曲『音の絵』 1
バッハ 前奏曲とフーガ 1
シチリアーノ 1
主よ人の望みの喜びよ 1
ドビュッシー 月の光 1
喜びの島 1
花火 1
エルガー 愛の挨拶 3
ブラームス ハンガリー舞曲第5番 3
リスト 愛の夢 2
ラ・カンパネラ 1
チャイコフスキー くるみわり人形 1
感傷的なワルツ 1
モンティ チャルダーシュ 2
グリーグ ホルベルグ組曲よりプレリュード 1
『抒情小曲集』第1集(アリエッタ~ワルツ) 1
メンデルスゾーン ロンドカプリチオーソ 1
ベニスの舟歌 1
モシュコフスキ スペイン舞曲集 第2番 1
ルロイ・アンダーソン 舞踏会の美女 1
ペヤチェヴィッチ ピアノ曲集『花の一生』より菊 1
ヨシポヴィッチ ガラス玉演戯 1
ショッカー 三つの踊り 1
プーランク 即興曲 第15番『エディットピアフを讃えて』 1
シューベルト 即興曲 第3番 1
ベートーヴェン ピアノソナタ 悲愴 1
ファリャ 火祭りの踊り 1
サン=サーンス 動物の謝肉祭 1
バーバー スーヴェニールより『ギャロップ』 1
ランゲ 花の歌 1
エンリケ・グラナドス 12のスペイン舞曲よりアンダルーサ 1
ジェイムズ・バーンズ アルヴァマー序曲 1
実際に演奏されたポピュラーの曲
作曲者または出典 曲名 演奏回数
ディズニー カリブの海賊より『ヨーホー』 1
イッツ・ア・スモールワールド 1
プーさんのハニーハント 1
リトルマーメイドより『パートオブユアワールド』 1
「アラジン」メドレー 1
ディズニーランド・メドレー 1
ジブリ もののけ姫より『アシタカせっ記』 1
もののけ姫より『アシタカとサン』 1
とのりのトトロより『さんぽ』 1
千と千尋の神隠しより『ふたたび』 1
もののけ姫より『もののけ姫』 1
ハウルの動く城より『人生のメリーゴーランド』 1
葉加瀬太郎 情熱大陸 3
Queen ボヘミアン・ラプソディ 1
レ・フレール Boogie Back To Yokosuka 1
Happiness 1
黒うさ 千本桜 1
King Gnu 白日 1
新沢としひこ 「にじ」ジャズバージョン 1
ADO 1
アストル・ピアソラ リベルタンゴ 2
中島みゆき 1
エンニオ・モリコーネ ニューシネマ・パラダイス 1
樹原涼子 ピアノランド5 Little Fantasy(マーメイドの夢) 1
ジャズスタンダード Sing Sing Sing 1
トラッド アメージンググレイス 1
その他映画音楽 パイレーツオブカリビアンより『彼こそが海賊』 1
テレビドラマから 北の国からより『遥かなる大地より~蛍のテーマ』 1
テレビアニメから ピカチュウのお散歩 1
名探偵コナンのテーマ 1
ルパン三世'78 1
ルパン三世'80 1
めざせポケモンマスター 1

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