ピアノやエレクトーンを習う理由はひとそれぞれですが、好きな曲を自分なりにアレンジしてみたいなと思う人も多いはず。そこで、今回はアレンジの基礎を学ぶ方法を考えてみます。大曲のアレンジをしたり、仕事としてヒット曲のアレンジを手がけたいという事ならまた違った取り組みが必要になりますが、最初はこんな風に考えてトライしたらいいのではないでしょうか。
アレンジとは何!?

バロック・古典音楽の時代は、作曲もできて演奏もできて、しかも即興演奏もできるというのが音楽家だったといわれています。ところが、時代が下るとだんだんと分業化されていきます。現在のポピュラー音楽では、作曲家が作ったものにアレンジャー(編曲家)が肉付けをしていく、という分業体制で楽曲を作ることが多いようです(注1)。
アレンジするにあたって、どんなジャンルにするか、楽器編成をどうするかといったことも決めていきます。ロシア民謡の「黒い瞳」を例に、アレンジによる違いをみていきましょう。
黒い瞳( ロシア民謡 ) 榊原喜三
Sophie Milman - Ochi Chernye
Louis Armstrong Ochi Chernyie (Dark eyes)
いちばん上の演奏は、日本を代表するマンドリン奏者榊原喜三によるもの。編成はマンドリンとマンドラとピアノのみです。
ふたつ目はロシアの歌姫ソフィー・ミルマンがロシア語で歌う黒い瞳ですが、ジャズアレンジです(ソフィーはアメリカ在住)。
3つ目もジャズアレンジですが、ルイ・アームストロングによる演奏・歌唱で、ビッグバンド編成です。
他にも多くのジャズメンがこの曲を演奏しており、ギタリストのジャンゴ・ラインハルトのアレンジや、トランペッターのディジー・ガレスピーによるアレンジが有名です。
「アレンジとは曲に肉付けをしていく作業」というのは、こういう比較からも感じ取れるのではないでしょうか?
いろんな曲を聴くことが大切

初歩的なアレンジ作業とはどんなものでしょうか? たとえばメロディーだけの一段譜を用意して、ピアニストとギタリストとマリンバ奏者に渡してみるところを想像してみましょう。それぞれの楽器ならではの音使い、それぞれ違う雰囲気の演奏になるはずで、これはアレンジ作業の第一歩といえるでしょう。
アレクサンダー・ズラトコフスキー(ピアノ)
石田 忠(クラシックギター)
アレンジという作業において、楽器を知っていることも必要だとわかります。また楽器の組み合わせでどういう世界観が生まれるかも知っておく必要があります。結局たくさんの音楽を聴いて、ジャンルの違い、編成の違い、楽器の特性などを知っていないと、アレンジの幅が狭くなってしまいます。
知っている曲からアレンジに挑戦
なじみのある曲の方が取りかかりやすいので、そういう意味でもたくさんの音楽を聴いた経験が役に立ちます。たとえば、ここまでアレンジ例を見てきた「黒い瞳(Dark Eyes)」を例にとると、出だしの楽譜はこんな感じ。

もしこの曲を全く聴いたことがなければAmのコードをつけてしまうかもしれませんし、そこだけ聴くとAmでもそれほど違和感がありません。でも、聞き比べると、これまで多くの人が演奏してきたようにE7がしっくりきます。下の三角マークをクリックすると、E7とAmを聴き比べることができます(最初がAm、次にEmで伴奏しています)。
Amの伴奏しか知らなければ、うっかり「これでいいかな?」と思ってしまいそうです。しかし聴き比べなくても、この曲を聴いたことがあれば「ん?」と引っかかるかもしれません。
こういったこともありますので、最初は知っている曲を題材としてアレンジに挑戦するとよいと思います。
遊び弾きをすること
たくさんの曲を聴くことに加えて、遊び弾きをすることもアレンジの力をつけるのに役立ちます。以前の記事でも触れましたが、エレクトーンのレジストレーションメニューを使って遊び弾きをしていると、自然とジャンルごとの曲の組み立て方がわかってきます。
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「うちの子は好きな曲ばっかり弾いて練習しないんです」とおっしゃる保護者の方もいらっしゃいますが、好きな曲を弾くことも練習になるので、どんどん弾いてほしいなと思います。テキストも大切ですが、好きな曲もたくさん弾いて、鍵盤と仲良くなってほしいです。自分で音を探しながら弾いてみる体験は、きっとアレンジの力をつけてくれるはずです。
おすすめCDベスト5
最後に、このアレンジはすごい! と思う曲が入ったおすすめCDをご紹介します。1位にあげた槇原敬之さんの「ヨイトマケの唄」は、美輪明宏さんの歌に比べてあっさりしていますが、さらっと心の中に入ってグサっと刺される感じ。マッキーらしいストリングスの使い方も魅力的です。「September」は本家のEarth, wind & Fireバージョンもノリがよく楽しめますが、熱帯Jazz楽団アレンジはビッグバンドのよさが見事に表現されています。5位にあげた栗コーダーカルテットは、他のアーティストとは違って、完成された曲をちょっと違う世界に崩している感じ。ラヴェルが栗コーダー版の「亡き王女のためのパヴァーヌ」を聴いたら深刻な顔をしそうですが、そこがよいと思えるアレンジです。
5位 栗コーダーカルテット「15周年ベスト」
おすすめは「亡き王女のためのパヴァーヌ」。
4位 真島俊夫 「ORIGINAL WORKS & TRANSCRIPTIONS ~三つのジャポニスム、宝島~」
おすすめは「コーラル・ブルー 沖縄民謡「谷茶前」の主題による交響的印象」。
3位 熱帯Jazz楽団「熱帯Jazz楽団Ⅱ ~September~」
おすすめは、タイトル曲の「September」。
2位 小野リサ「Japao 2」
おすすめは「いのちの歌」。
1位 槇原敬之「Listen To The Music 2」
おすすめは「ヨイトマケの唄」。
注1……中には作曲からアレンジまで手がけているシンガーソングライターもいます。槇原敬之さんや星野源さんなどが挙げられます。
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