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「空気」を読んでも従わない

2020年1月10日

AERA dot.の人生相談に高評価が集まる鴻上尚史さんが書いた、悩める子供たちへのメッセージ。AERA dot.に連載している記事に比べると、さらに読みやすくシンプルに書かれています。岩波ジュニア新書より刊行されている一冊です。

読者層としては、おそらく中学生を対象としているのだろうと思います。なので、非常に読みやすく、やさしい文章で書かれています。鴻上さんは『不死身の特攻兵』でも、複雑な問題をわかりやすく、鮮やかに解説していました。「この人アタマがいいんだなー」と思いながら読んだ記憶があります。本書ではさらにわかりやすく、悩んでいる子供たちを取り巻く環境をシンプルに切り分け、端的にアドバイスを送っています。詳細を省いてシンプルに徹したため、やや論理性が犠牲になっているかも知れません。しかし、そんなことよりも、悩んでいる若者たちに届く言葉であることが大事だと思えます。

鴻上さんは、若者たちを取り巻く世界を「世間」と「社会」に切り分けました。世の中で息苦しさや生きにくさを感じている時、自分は今「世間」と退治しているのか、「社会」と向き合っているのかを考える。相手が分かるだけでも、対処法を見つける手がかりになりそうです。

さらに鴻上さんは「世間」のルールを5つに絞ってリスト化しました。

[box class="yellow_box" title="「世間」のルール"]
・ 年上がえらい
・ 「同じ時間を生きる」ことが大切
・ 贈り物が大事
・ 仲間外れを作る
・ ミステリアス
[/box]

このリストだけを見ると飲み込めない点もあると思いますが、そんな場合はぜひ本書を手にとってください。鴻上さんはこういった「世間」のルールを可視化するだけではなく、それぞれのルールに悩まされた時の対処法も紹介してくれています。

最後に鴻上さんは「仲間外れを恐れない」というアドバイスを贈ってくれます。誰だってひとりは嫌だけど、友達のふりをするのはどうなのか? 「友達のふりをする苦痛」と「一人のみじめさ」を天秤にかけて、どっちがイヤかを考えれば答えが見えてきます。

鴻上さん自身、中学時代にどっちがイヤかを考えて「一人のみじめさ」を選んだのだといいます。

しばらくすると、同じように「友達のふりをするのがイヤだ」と思って「一人」を選んだ人がいることに気付きました。 そして、その人と話し始めました。そして、本当に友達になりました。

それが、鴻上さんの中学時代だったようです。鴻上さんはその後、早稲田大学在学中に、大変有名だった劇団「第三舞台」を立ち上げ、成功に導いています。現在「第三舞台」は解散していますが、彼は演出家として活躍中です。


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