インタビュー

『僕たち世代の伝統の伝え方』 與那國太介インタビュー

2019年12月12日

今や世界で活躍する與那國太介さんは、琉球古典音楽安冨祖流師範。古典音楽や民謡など、さまざまな沖縄の音楽を愛し、演奏を続けています。国際的に活躍するかたわら、子供たちに三線や沖縄の音楽を教える活動を続ける與那國さんに、今の沖縄の芸能や伝統についてお話を聞きました。

----はじめて三線や沖縄の音楽と関わったのは?

僕の場合、両親がふたりとも趣味で芸能をやってたんです。お父さんが三線、母親が舞踊ですね。ずっと趣味で稽古場に通っていたし、おうちに帰って自主練をしているのを見ていた。その環境があって、いつも近くで音楽が流れてた。僕は、親が仕事に行ってる間に、こっそり親の三線ケースを開けて、またそっと閉めて隠したりしてたけど、バレてたでしょうね(笑)。

----ということは、小さいころから三線をはじめて……。

三線の稽古に通いだしたのは19歳の時。大学(沖縄県立芸術大学)には23歳の時に行ったんです。ほかの人に比べたら、遅かったと思います。でも家の環境が大きかったですよ。小さいころから、習っていたわけではないけどいつも音楽が流れている環境があった。

----19歳で始める決心というのもすごいですね。

中学高校を通しての親友の親が、舞踊の先生と太鼓の先生だったんですよ。そのご両親に「僕も三線やりたいな」みたいな感じで話をしたら「あー、わかった」ということになって。ちょっと遠かったんですが、直接稽古場まで連れて行ってくれて「じゃぁ、頑張りなさいよ」と背中を押された。そこからが大変でした。僕も親友のご両親に紹介してもらった手前、やめるわけにはいかないという思いがあって、先生のほうも「紹介で来てくれたから、ちゃんと育てなければ」という思いもあるし。だから「とりあえずあんた毎日来なさい」と。「わかりました。毎日来ます」ということになって、毎日通いました。

----そんな與那國先生が沖縄の音楽を伝える上で考えていることは?

僕は那覇生まれで、じいちゃんの世代から那覇に住んでいます。でもうちのルーツは与那国島にある。与那国には、親戚もいるんだけど、島の言葉もわからないから、運よくつながっているなと感じます。6年前に豊見城市に引っ越してきて、いちばん近い保育園を探したら、偶然園長先生と僕の親がまたいとこだとわかったんですよ。それで、いろいろとよくしてもらって「良かったなー」と思っています。でも、与那国の言葉はわからないんだけどね。音楽は勉強して多少弾けるようになっているけど、言葉も今から少しずつ勉強して、頑張って聞き取れるくらいになったらいいんだけどねぇって思っている。今はさっぱりっぱりわからないけど(笑)。

方言はもう、僕ら世代がしゃべれないから、子供たちは生活の中でも聞く機会がなくなってるじゃないですか。今のおじー、おばーたちは劇場に楽しみに行ってるわけですが、あと十年、二十年後の子供たちは劇場に楽しみに行くというより、勉強しに行くという感覚になるだろうなと思っています。「昔はこんなだったんだね」みたいな感じにね。それによって芸能の見方も変わってくる気がします。だから、子供たちには、早いうちにうちなーぐちや沖縄の音楽がある環境に慣れさせてあげたほうがいいと思います。
最近は学校もね、三線教室とかを授業に取り入れるようになっているけど、2か月の短期間とかじゃないですか。できれば洋楽と同じくらいの時間を取ってあげたい。沖縄に生まれ育ってるわけじゃないですか。だったら、早くから触れさせてあげるほうがいい。

----與那國先生ご自身も、早くからお家で芸能に触れていたわけですからね。ちなみに、子供たちが始めるとしたら、入り口はどんな曲がいいですか?

やっぱり歌じゃないですか。わらべ歌。わらべ歌は、僕らの世代でも聞いたことがある曲がたくさんあるんですよ。僕はまずそれを、今の若い両親に教えて「あっ、小さいときに聞かされてたな」みたいに思い出してもらいたい。振り付けも簡単だから、それをまず両親に教えて、そしたら子供がマネするじゃないですか。曲は『赤田首里殿内(あかたすんどぅんち)』とか『てぃんさぐぬ花』とか。『てぃんさぐぬ花』は沖縄県が県民愛唱歌として推奨しているんですが、もう今の親世代がわからなくなってるからね。僕ら世代はまだ子守唄で聞かされてたけど、二十代くらいになるともう、聞いたこともないっていう人もいるから。
だから僕はまず今の親世代に、こういった歌を覚えてもらって、それが子供たちに伝わっていくといいなと思っています。

[box class="yellow_box" title="プロフィール"]

與那國太介(よなぐに たいすけ)
琉球古典音楽安冨祖流絃声会師範(三線、笛、胡弓)。人間国宝の照喜名朝一に師事。沖縄県立芸術大学院舞台芸術専攻修士課を卒業後、ユネスコ無形文化遺産の組踊、古典音楽、舞踊、琉球民謡の演奏者として琉球音楽に幅広く携わりながら、国立劇場を中心として県内外の舞台演奏で活躍。中国、韓国、台湾、タイ、オーストラリア、フランス、ドイツ、スペイン、デンマーク、イギリス、アイスランド、ロシアなど各国でも演奏活動を続けている。

インフォメーション

與那國三線教室
TEL 090-4357-8099
〒901-0204 豊見城市金良29番地

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